情報商材詐欺とマルチ商法(ネットワークビジネス)被害/手口と対処方法

こんにちは!司法書士の髙山です!先日、とんがりコーンみたいな帽子を被った人が運転する車になかなか激しくあおられたので、ブレーキランプ5回点滅させておきました😫とんがりコーンを見るたびにトラウマになりそうです😯さてさて、本日は、情報商材詐欺からマルチ商法被害に巻き込まれるということについてです。

情報商材詐欺からマルチ商法(ネットワークビジネス)被害に

一例を紹介します。M君は、SNSで知り合ったSから、絶対に儲かる投資の方法があると誘われて、投資に使うマニュアルと自動売買ツールを80万円で購入しました。手持ちの資金がないので断ろうとしましたが、「すぐに儲かるようになるから消費者金融で借りればいい」と消費者金融業者に連れていかれて、借金して支払いました。しかしそのマニュアルと自動売買ツールはいずれも、全く聞いていた説明とは違い、利益をあげることはできませんでした。そこでM君はSにマニュアルと自動売買ツールを返却するからお金を返してほしいと言いましたが、「返金はできないが、そのマニュアルと自動売買ツールを誰かに売れば歩合がもらえるし、その買った人がさらに売ればそこからも歩合がもらえるから、自分達のグループに入って一緒に活動しないか。」と自らも商品を売るグループに入るよう勧誘されます。消費者金融の支払いもしないといけないという焦りから正常な判断能力を失ってしまっているM君は了承し、自らも友達などを勧誘するようになるのでした。
この事例では、価値のない投資などに関連した情報商材を詐欺的に購入させられるところまでは、よくある情報商材詐欺の手口ですが、このケースはその後に、後出しマルチというマルチ商法(ネットワークビジネス)被害にも遭っています。

マルチ商法(ネットワークビジネス)被害

マルチ商法(ネットワークビジネス)とは、商形態の一つです。マルチはマルチレベルマーケティング(多階層販売方式)の略語です。簡単に説明すると、加入者が新たな加入者を勧誘し、その勧誘された加入者がさらに新たな加入者を勧誘するということを順次繰り返すことにより、加入者をねずみ算式に増やしてピラミッド型に多層化した人的組織を形成してゆくというものです。自分より下位の加入者が増えると得られる利益も増えるというしくみを有しています。
マルチ商法で特に問題なのは、下位の層の加入者が多いければ多いほど収入が増えるしくみのため、無理な勧誘(上記の事例のように消費者金融で借金をさせてまでなど)になりがちなため、友人関係などの人的関係を壊すことになってしまう点です。

マルチ商法(ネットワークビジネス)被害の対処方法

特定商取引法という法律でマルチ商法(ネットワークビジネス)を連鎖販売取引として規制しています。連鎖販売取引とは、いくつかの条件を満たす取引を言います。その条件を簡単にまとめると以下のものです。
①物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
②再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
③特定利益(商品の販売利益のはほか、新たな加入者の勧誘に成功したことに対する対価等)が得られると誘引し
④特定負担(商品の購入もしくはその役務の対価の支払いまたは取引料の提供)を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの
マルチ商法は、連鎖販売取引に該当する場合には、取引を適正化するための行政規制と被害者を救済するための民事ルールの適用を受けることになります。某マルチ商法(ネットワークビジネス)組織が行政処分されたというニュースがよくありますが、それが行政規制です。民事ルールとしては下記の三つがあります。
(A)クーリングオフ
契約書面を受け取ってから20日間は、無条件で契約を解除できます。詳しくはこちらを参照ください。 https://takayama-office.com/blog/%e3%82%af%e3%83%bc%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%82%aa%e3%83%95/
(B)取消権
勧誘の際に虚偽の説明があり誤認して契約を締結した場合の取消制度があります。
(C)中途解約
クーリングオフと取消権の適用がない場合であっても、中途解除制度と中途解除した場合の返品制度があります。
また特定商取引法以外にも、勧誘に問題がある場合が多いので、消費者契約法の不実告知(同法4条1項1号)、断定的判断の提供(同項2号)、事実不告知(同条2項)、困惑(同条3項)による取消しや、民法の公序良俗違反(同法90条)、不法行為(同法709条)、詐欺(同法96条)、錯誤(同法95条)等を主張できる場合があります。これらを根拠に返金を求めていくことになります。

後出しマルチ

今回の事例の場合は、連鎖販売取引の要件のうち、③特定利益(商品の販売利益のはほか、新たな加入者の勧誘に成功したことに対する対価等)が得られると誘引しとの要件を満たしていません。このような手口を後出しマルチと呼んでいます。後出しマルチの問題点は、商品の品質等に関して事実と異なる説明をして売りつけ、消費者が代金を支払うためにした借金の返済に困る状況を作り、この窮地につけこんで自ら更なる被害者の勧誘をさせるという点にあります。極めて悪質な手法です。

後出しマルチ被害の対処方法

後出しマルチは、上記の通り、連鎖販売取引の要件を満たしていません。そのため特定商取引法の連鎖販売取引の規制の対象にはならない可能性があります。しかし、消費者庁は後出しマルチ被害が多発しているということから、特定商取引法による行政処分を連鎖販売取引ではなく訪問販売に該当するとして処分しました。訪問販売として考えた場合には、販売者の事業所以外の場所で勧誘して契約を締結させている場合には、訪問販売に該当し、投資に使うマニュアルや自動売買ツールは商品に該当するので今回の事例は、訪問販売として規制を受けます。また訪問販売に該当する場合は、クーリングオフの制度も適用されます。期間は、8日間と連鎖販売取引と違うので注意が必要です。また、通常のマルチ商法(ネットワークビジネス)被害と同様に、消費者契約法の不実告知(同法4条1項1号)、断定的判断の提供(同項2号)、事実不告知(同条2項)、困惑(同条3項)による取消しや、民法の公序良俗違反(同法90条)、不法行為(同法709条)、詐欺(同法96条)、錯誤(同法95条)等を主張できる場合があるでしょう。

今回は、情報商材詐欺からマルチ商法(ネットワークビジネス)被害に関してでした。マルチ商法や情報商材詐欺にお困りの場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。そして皆さんも後続車にとんがりコーンがいることが確認できた場合は警戒しましょう😭ほなっ!